月光書房 ・ 戌の刻 ・ 宵
この巻について
戌の刻。日がすっかり暮れ、家々の窓に、ひとつまたひとつと灯りがともる刻である。
この巻の十二編は、灯りをめぐる団欒と孤独の物語だ。湯気の立つ食卓、一人分の夕食、赤提灯、ガス灯を点けて回る点灯夫、停電の夜の蝋燭、灯籠流し、夜なべの針、夜学の窓、灯りの下の手紙、宵宮の提灯、戸を叩く客、そして最初の灯りを配って歩く者――。
灯りは人を寄せ、団欒を生む。けれど同じ灯りが、ひとりでいることの影をも、そっと照らし出す。宵闇の空には、家々の窓明かりと競うように、蒼いミラ彗星がひとつ、静かに昇っている。