飴色の灯りの下で
現代・団欒橙の灯りと湯気の立つ鍋を囲む、なんでもない一夜の団欒。だがその当たり前が、いつか失われる尊いものだと、のちに知る。
一人分の湯気
情話・孤独妻を亡くした老人の、灯りひとつの夕食。向かいの空席とラジオの声、宵空に昇る蒼い彗星。孤独の底に息づく、灯りを介した静かなつながりの物語。
一二三の灯
市井・人情路地の突きあたりの赤提灯。仕事帰りの見知らぬ客三人が、飴色の灯りのもと、それぞれの荷を打ち明ける。宵の刻だけ、他人が家族になる。
四十七の灯
時代・情話明治の宵、四十七本のガス灯を点けて回る点灯夫が、闇のなかで母を待つ子に火の点し方を教える。灯りは種火から種火へ、人から人へわたされてゆく。
停電の夜のひとつの炎
現代・家族宵に停電した家。テレビもスマホも死んだ暗がりで、一本の蝋燭を囲んだ家族は、久しぶりに顔を寄せ、話し、笑う。不便がつれてくる、思いがけない団欒の数時間。
送り火のあとで
民俗・叙情宵の音無川。去年まで二人で流した精霊送りの灯籠を、今年は一人で流す。片方の手袋を添えて送る、鎮魂と祈りの一夜。
針の音
時代・情話子らが寝静まった宵、飴色の灯りのもと、母は片方だけの手袋を夜ごと繕う。届かぬと知りつつ手を動かす、語られぬ愛情の静かな物語。
夜学の窓
青春昼は鉄工所、宵は夜学。疲れた体で他人の団欒の窓を見上げる若者が、鞄の底の青いマッチで灯す、消えない胸の火。
最後の一通
情話妻を亡くした老人が宵の灯りのもと、青いマッチで火をともし、届かぬ手紙を書く。桐箱の底から現れた、妻の遺した最後の一通。
提灯の川
叙情宵宮の火の川を、親に手を引かれて歩く子ども。綿菓子、金魚すくい、射的の灯りのなか、片方の手袋と蒼い星が、消えない火をそっと胸にともす。
戸を叩く音
幻想・情話妻子を亡くし独りで宵を過ごす老人の家を、灰色の被布の女が訪ねる。灯りを絶やさぬ者だけが招く、ふしぎな来訪の物語。
灯りを配る者
寓話夜ごと真っ暗になる国を、青いマッチをさげて一軒ずつ最初の灯りを配って歩く者。灯りは団欒を生み、孤独を照らし出す、光と影の寓話。