月光書房
戌の刻 ・ 宵 ・ 灯りと団欒・孤独

灯りの物語

家々に灯りがともる刻。あたたかな団欒と、灯りひとつの孤独が、同じ夜に並び立つ――灯りをめぐる十二編。

この巻について十二をつなぐ符牒
目次 ・ 十二の物語
第一話

飴色の灯りの下で

現代・団欒

橙の灯りと湯気の立つ鍋を囲む、なんでもない一夜の団欒。だがその当たり前が、いつか失われる尊いものだと、のちに知る。

温井 湊人約25頁
第二話

一人分の湯気

情話・孤独

妻を亡くした老人の、灯りひとつの夕食。向かいの空席とラジオの声、宵空に昇る蒼い彗星。孤独の底に息づく、灯りを介した静かなつながりの物語。

冬野 静波約26頁
第三話

一二三の灯

市井・人情

路地の突きあたりの赤提灯。仕事帰りの見知らぬ客三人が、飴色の灯りのもと、それぞれの荷を打ち明ける。宵の刻だけ、他人が家族になる。

赤堀 宵路約28頁
第四話

四十七の灯

時代・情話

明治の宵、四十七本のガス灯を点けて回る点灯夫が、闇のなかで母を待つ子に火の点し方を教える。灯りは種火から種火へ、人から人へわたされてゆく。

外村 与一約25頁
第五話

停電の夜のひとつの炎

現代・家族

宵に停電した家。テレビもスマホも死んだ暗がりで、一本の蝋燭を囲んだ家族は、久しぶりに顔を寄せ、話し、笑う。不便がつれてくる、思いがけない団欒の数時間。

蝋山 悠水約25頁
第六話

送り火のあとで

民俗・叙情

宵の音無川。去年まで二人で流した精霊送りの灯籠を、今年は一人で流す。片方の手袋を添えて送る、鎮魂と祈りの一夜。

篝 音無約27頁
第七話

針の音

時代・情話

子らが寝静まった宵、飴色の灯りのもと、母は片方だけの手袋を夜ごと繕う。届かぬと知りつつ手を動かす、語られぬ愛情の静かな物語。

綿貫 縫約25頁
第八話

夜学の窓

青春

昼は鉄工所、宵は夜学。疲れた体で他人の団欒の窓を見上げる若者が、鞄の底の青いマッチで灯す、消えない胸の火。

夜久 志音約26頁
第九話

最後の一通

情話

妻を亡くした老人が宵の灯りのもと、青いマッチで火をともし、届かぬ手紙を書く。桐箱の底から現れた、妻の遺した最後の一通。

綴喜 文約26頁
第十話

提灯の川

叙情

宵宮の火の川を、親に手を引かれて歩く子ども。綿菓子、金魚すくい、射的の灯りのなか、片方の手袋と蒼い星が、消えない火をそっと胸にともす。

宮下 まつり約26頁
第十一話

戸を叩く音

幻想・情話

妻子を亡くし独りで宵を過ごす老人の家を、灰色の被布の女が訪ねる。灯りを絶やさぬ者だけが招く、ふしぎな来訪の物語。

来栖 宵子約25頁
第十二話

灯りを配る者

寓話

夜ごと真っ暗になる国を、青いマッチをさげて一軒ずつ最初の灯りを配って歩く者。灯りは団欒を生み、孤独を照らし出す、光と影の寓話。

明石 宵一郎約25頁
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