月光書房 ・ 子の刻 ・ 真夜中
この巻について
第一夜集が「語られた十二の物語」だとすれば、この第二夜集は、同じ十二の夜・同じひとつの星を、語られなかった側から描いた十二編である。
物語には、いつも語り手がいる。たいていは人で、たいていは「わたし」や「彼」として、出来事の正面に立っている。けれど、ひとつの夜には、語られなかった視点がいくつも残されている。交差点に立ちつくす街灯。見送られる側の死者。ことばを持たないけもの。取り壊しを待つ建物。数百年のちに断片だけを手にする学者。そして、ページの向こうの「あなた」自身。
この巻の十二編は、その「ふつうではない視点」を、それぞれ一つずつ引き受けている。二人称で書かれたもの、時間を逆さまにさかのぼるもの、註釈だけで組み立てられたもの、取扱説明書の体裁をとるもの、信じてはいけない語り手のもの――。形式は物語ごとにまったく違うが、どれも最後まで、その一つの視点を崩さない。視点そのものが、ここでは物語の背骨なのだ。
同じ蒼い彗星が、ここでもどの空にも一度だけ尾を引く。第一夜集のどこかで起きた出来事と、そっと手をつなぐ場面もある。けれど見る位置が変われば、同じ夜がまるで違う色に見える――それを確かめてもらえたら、うれしい。
語る側から、見ていた側へ。どうぞ、視点を変えて。