月光書房
子の刻 ・ 真夜中 ・ 語りの視点

まなざしの十二夜

同じ一夜・同じ星を、語られなかった側から描く十二の視点。物が、場所が、死者が、けものが、そして「あなた」が見つめる。

この巻について十二をつなぐ符牒
目次 ・ 十二の物語
第一話

待つという字

文芸ミステリ二人称「あなた」

終電で見知らぬ無人駅に降りたあなたを、灯りひとつが待っていた。忘れた一夜と片方の手袋が、彗星の下でほどけてゆく。

夜野 すばる約26頁
第二話

灯のもとを過ぎるもの

都市・時間叙情物(街灯)の視点

交差点に八十年立つ一本の街灯が、最後の灯が尽きる夜までに見送ってきた、無数の出会いと別れを語る。最後に照らすのは、星の渡る空の下で子守唄を歌う母と子。

灯路 詠子約25頁
第三話

天井の隅から

幽霊譚・死者の側死者の視点

三日前に死んだ指物師が、自宅の通夜を天井の隅から見守る。言えなかった「ありがとう」と、片方だけ隠した手袋を心残りに、彼はまだ行けない。

桐山 慎約26頁
第四話

沖膳

民俗・共同体一人称複数「わたしたち」

海に消えた一人を六十年待つ漁村。彗星の夜、沖に浮かぶ小舟の影を村は見る。待つとは何かを問い直す、合唱のような物語。

波多野 汀約25頁
第五話

ふたつの匂い

情話動物(老猫)の視点

岬の灯台守と暮らす老猫が、ことばではなく匂いと温度で老人の最期を察してゆく。海の上を彗星がわたる、見送りの一夜の物語。

七尾 鈴約26頁
第六話

最後の灯がともる夜

時代横断・叙情場所(映画館)の視点

閉館の決まった場末の映画館が、内で生きられた無数の夜を語る。最後の客が片方だけの手袋を置いていく一夜、天窓を蒼白い尾が横切る。

館野 螢約25頁
第七話

星が海をわたるまで

ミステリ・感情時間逆行(逆年代記)

父を見送った夜から、二人だけの歳月を一場面ずつ遡る。終わりが、いちばんはじめの夜へとつながってゆく。

逆瀬川 朔約26頁
第八話

ハルバ断片群註解 ――彗星の夜の復元

アーカイブSF未来の研究者の註解

数百年後の学者が、滅びた都市ハルバの最後の一夜を、矛盾し欠落した紙片から復元してゆく。考証の隙間に、抑えきれぬ私情がにじむ。

網野 史約25頁
第九話

灯、あるいは未定義事象の記録

近未来機械(管理AI)の視点

深夜の高層ビル。管理AI「灯」は温度と音と電力の合間に、定義できぬものを記録する。涙、迷子、青い尾の星。規定にない動作を、ただ一度。

白石 律約26頁
第十話

雪夜の証言

文芸ミステリ多声(羅生門型・五つの証言)

雪の橋の上の小さな別れを、宿の女将、酒場の親仁、薬売り、女、そして古書店の主が順に証言する。誰も嘘をつかぬのに像は結ばず、最後の声でやさしい真実が浮かぶ。

柚木 涼約29頁
第十一話

大切な人を見送るための手引き

実験・情話取扱説明書の形式

大切な人を見送る手順書。指示の裂け目から、二つの喪失を抱えた書き手の悲しみが静かに立ちあがる。

手向 灯約25頁
第十二話

記憶のいい人

心理サスペンス信頼できない語り手

妹を失った優しい姉が静かに語る回想。だが繰り返される矛盾と避けられる一語から、彗星の夜の真実が立ちあがる。

真鍋 澄約25頁
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