月光書房
子の刻 ・ 真夜中 ・ 第 十一 話

大切な人を見送るための手引き

手向 灯
実験・情話 ・ 取扱説明書の形式 ・ 約25頁

はじめに

大切な人を見送るための手引きである。

この冊子は、これから誰かを送り出そうとしているあなたのために編んだ。手順は番号順に並べてあるが、必ずしも順番どおりに進める必要はない。あなたの足が止まったところで、止まればよい。指示文はできるだけ短く、できるだけ正確に書いた。正確に書こうとすればするほど、何かがこぼれていく。それでも書く。書いておかなければ、わたしはきっと忘れてしまうから。

この手引きで「あなた」と呼びかける相手は、読んでいるあなたであり、同時に、かつてのわたしでもある。どちらに読まれてもかまわないように書いた。

所要時間の目安は、記していない。見送りには、決まった時間がない。

第一章 準備するもの

見送りに先立って、次のものを手元にそろえること。過不足があってもよい。なければないで進められる。ただし、できれば全部あったほうがよい。

一、椅子をひとつ。
見送る相手の枕元に置く。背もたれのあるものがよい。あなたは長い時間そこに座ることになる。固い椅子だと腰が痛くなり、痛みのせいで相手の顔から目を離してしまう。柔らかすぎる椅子だと、眠ってしまう。眠ってはいけない、とは言わない。眠ってもよい。ただ、眠っているあいだに何かが起こることがある。それだけは、覚えておくこと。

わたしは固い椅子を選んだ。台所にあった木の椅子を運んできた。脚の一本が短くて、座るたびにかたりと鳴った。その音を、あの人は最後まで覚えていたと思う。

二、白い布を一枚。
顔を拭くため、手を拭くため、自分の涙を拭くために使う。一枚で足りなければ、用意できるだけ用意する。布は新しいものでなくてよい。むしろ、古いほうがよい。何度も洗われて柔らかくなった布のほうが、肌に当てたときに角が立たない。

三、水を入れた器を。
渇いた唇を湿らせるために使う。スプーンか、湿らせた布の端で、唇のあわいにそっと触れさせる。飲ませようとしてはいけない。もう、飲み込む力は残っていないことが多い。湿らせるだけでよい。それでも相手は、与えられた水のことを、どこかで知っている。

四、灯りをひとつ。
電灯ではなく、できれば小さな炎がよい。蠟燭でも、行灯でもよい。炎は揺れる。揺れる灯りは、動かない部屋に、まだ何かが息をしているという気配を残す。

わたしは、藍色のマッチ箱で蠟燭に火を点けた。三日月の刻印された箱だった。いつ買ったものか、もう思い出せない。蓋を引くと、燐の匂いがして、小さな炎が立った。その箱はまだ抽斗にある。中のマッチは、あの夜から一本も減っていない。減らさないように、している。

五、紙と、書くもの。
これは、わたしのための項目かもしれない。あなたには要らないかもしれない。けれど、念のため挙げておく。見送りのあいだ、あなたはきっと、何かを書きとめたくなる。相手が最後に言ったこと。最後に動かした指のかたち。窓の外の音。書きとめておかなければ、そのすべては、見送りが終わると同時に、煙のように散ってしまう。

書きとめるのは、悲しみではない。
細部である。あの晩、相手が、どんなふうに、まばたきをしたか。喉が、どんな音を立てたか。何時頃、雲が切れて、月が出たか。そういう、つまらない、こまかなことを、書きとめておきなさい。なぜなら、何年か経って、あなたが、いちばん思い出したくなるのは、悲しみそのものではなく、その細部のほうだからである。悲しみは、放っておいても、消えない。けれど、細部は、驚くほど早く、消えていく。だから、それを、捕まえておきなさい。

六、その人の、好きだったものを、一つ。
食べものでも、花でも、写真でもよい。それを、枕元の、相手から見える場所に、置いておく。もう、目は見えていないかもしれない。それでも、置いておく。それは、相手のためというより、その品物に、最後の役目を、果たさせてやるためである。長いあいだ、その人に愛されてきたものに、最後の別れを、言わせてやりなさい。

これだけそろえたら、椅子に座ること。
背筋を伸ばさなくてよい。あなたの肩が、いちばん楽なかたちでいなさい。これから始まるのは、長い長い、待つという仕事である。

待つことには、技術が要る。
誰も教えてくれないが、要るのだ。

第二章 部屋を整える

見送る部屋は、静かでなくてよい。
むしろ、生活の音が少し残っているほうがよい。隣の部屋で湯が沸く音。雨樋を伝う水の音。遠くを行く電車の、低い震え。そういう音は、見送られる人を、まだこの世界の側につなぎとめる。完全な静寂は、人を急がせる。

窓を、少し開けること。
空気が入れ替わるように。だが、開けすぎてはいけない。冷えた空気は、弱った体には鋭すぎる。指三本ぶんほど、開ければよい。その隙間から、外の匂いが入ってくる。土の匂い、草の匂い、雨が近い夜には、雨の匂い。

あの人は、雨の匂いが好きだった。
だから、最後の夜、わたしは窓を指三本ぶん開けた。ちょうど、雨が降りそうな晩だった。けれど、雨は降らなかった。降りそうで、降らなかった。空気だけが、湿ったまま、部屋に流れ込んでいた。あの人が好きだったのは、雨そのものではなく、雨が来る前のあの匂いだったのかもしれない、と、いまになって思う。降らない雨の匂いを、わたしたちは長いあいだ、二人で吸っていた。

時計を、見えないところに移すこと。
あるいは、止めること。
見送りのあいだ、時刻は意味を持たない。針の音は、いま何時かを知らせるのではなく、あと何時間か、を数えはじめる。それを聞いてはいけない。時計を伏せ、針を止め、あなたは、時刻のない部屋に入りなさい。

鏡も、覆っておくとよい。
これは、古い習わしであるが、理由のないことではない。見送りのあいだ、あなたは、自分の顔を、見ないほうがよい。ふと鏡に映った自分の顔の、その疲れ、その憔悴を見ると、人は、急に、自分のほうを、可哀想に思いはじめてしまう。それは、いまは、いらない感情である。いまは、あなたの顔ではなく、相手の顔だけを、見ていなさい。鏡を、白い布で覆い、部屋から、あなた自身の顔を、消しておきなさい。

わたしは、時計を止めなかった。
それが、わたしのいちばんの後悔である。
止めればよかった。あの晩、わたしは何度も時計を見た。三時を過ぎたとき、わたしは、まだ朝は遠い、と思った。朝が来れば、いつもの医者が来る。そうすれば、何かが変わるかもしれない。そんなふうに、わたしは朝を待っていた。朝を待つということは、それまでのあいだに何が起こってもよい、と、心のどこかで認めてしまうことだった。

時計を止めなさい。
あなたは、わたしと同じ後悔をしなくてよい。

第三章 声をかける

声をかけること。
これは、いちばん大切な手順である。だが、いちばん難しい手順でもある。

何を言えばよいのか、誰も知らない。
わたしも、知らなかった。

耳は、最後まで残る。
これは、本当のことである。目が見えなくなり、手が動かなくなり、もう何の反応もなくなったように見えても、耳は聞いている。だから、最後まで、声をかけ続けること。

ただし、悲しい声で話してはいけない。
泣きながら話してもよいが、声まで泣かせてはいけない。震える声、掠れた声は、相手を不安にさせる。あなたが取り乱していると知ったら、相手は、安心して逝けなくなる。だから、あなたは、できるだけ普段の声で話しなさい。

普段の声で、普段のことを話す。
今日、何があったか。庭の花が咲いたこと。猫が縁側で眠っていたこと。隣の家の子が、また自転車で転んだこと。意味のない、たわいのない、毎日の話。そういう話を、相手はいちばん聞きたがっている。立派な別れの言葉ではない。最後の感謝でもない。ただ、いつもの、なんでもない話。

わたしは、味噌汁の話をした。
今朝の味噌汁に、入れる豆腐を切らしていたこと。だから、油揚げだけの味噌汁になってしまったこと。あなたは油揚げの味噌汁が好きだったから、ちょうどよかったかもしれない、と。そんな話をした。あの人は、目を閉じたまま、口の端を、ほんの少しだけ動かした。笑った、のだと思う。わたしは、そう思うことにしている。

名前を呼ぶこと。
相手の名前を、何度でも呼びなさい。名前は、その人がこの世にいたという、いちばん古い証である。生まれたとき、誰かがその名を付けた。その名を呼ばれて、その人は育った。叱られるときも、褒められるときも、その名で呼ばれた。だから、最後にも、その名で呼ぶ。

わたしは、あの人の名前を呼んだ。
何度も呼んだ。返事はなかった。それでも呼んだ。名前を呼ぶたびに、わたしは、二人で過ごした時間の、いちばん最初の場所に戻っていく気がした。あの人がまだ若く、わたしもまだ若く、互いの名前を、照れながら呼び合っていた頃に。

名前を呼ぶことは、思い出すことである。
だから、声をかけることは、いちばん残酷な手順でもある。

第四章 手を取る

手を取ること。
見送りのあいだ、ずっと、相手の手を握っていなさい。

握り方に、決まりはない。
強く握ってはいけない。弱った手は、もろい。だが、添えるだけでもいけない。添えるだけの手は、すぐに離れてしまう。あなたの手のひらの真ん中に、相手の手を、卵を持つように包む。それでよい。

手は、嘘をつかない。
言葉が出なくなっても、手は応える。あなたが握ると、相手も、ほんのわずか、握り返してくる。それは、力ではない。意思ですらないかもしれない。けれど、たしかに、応えがある。皮膚の下の、いちばん奥のほうから、何かが、あなたの手に返ってくる。

相手の手の、皺を見ること。
その手が、何をしてきた手なのかを、皺は覚えている。鍬を握った手か。針を持った手か。子どもを抱いた手か。本のページをめくり続けた手か。あなたは、その皺の一本一本を、指でなぞりなさい。なぞりながら、思い出しなさい。その手に、何度、触れられてきたか。

わたしは、あの人の手の皺をなぞった。
左手の薬指に、指輪の痕があった。長年、同じ指輪をはめていたから、そこだけ皮膚がへこんでいた。指輪はもう、ずいぶん前に外していた。指が細くなって、抜けてしまうからと。けれど、痕だけは残っていた。指輪のかたちの、白い谷が。わたしは、その谷を、何度もなぞった。

爪のことを、書いておく。
人は、最後まで、爪が伸びる。死の床にあっても、爪は伸びるのだ。それを知ったとき、わたしは、不思議な気持ちになった。体のほとんどが、もう終わろうとしているのに、爪だけが、まだ、明日を信じているように伸びている。あなたも、もし気づいたら、その爪を、そっと整えてあげなさい。それは、見送る者にできる、ささやかな、けれど確かな仕事である。

第四章の二 額に触れる

手のほかに、もう一つ、触れてよい場所がある。
額である。

人の額は、その人が、いちばん長く考えごとをしてきた場所である。
喜びも、悩みも、迷いも、すべて、この狭い、丸い丘の裏側で、繰り返されてきた。だから、見送りのあいだ、ときどき、相手の額に、手のひらを当てなさい。

熱を、確かめるためではない。
あなたの手のひらの温度を、相手に、伝えるためである。

幼い子が熱を出したとき、母親は、その額に手を当てる。それは、熱を測っているようでいて、本当は、別のことをしている。大丈夫だよ、ここにいるよ、と、皮膚を通して、伝えているのである。だから、その所作を、最後に、もう一度、繰り返しなさい。立場が、逆になっただけである。かつて、あなたの額に手を当ててくれた人の額に、今度は、あなたが、手を当てる。

わたしは、あの人の額に、手を当てた。
あの人の額には、深い横皺が、三本あった。考えごとをするとき、いつも、その三本が、寄った。わたしは、その皺を、指で、上から下へ、撫でた。皺が、ほどけるように。あなたは、もう、何も、考えなくていい。何も、悩まなくていい。その三本の谷に、わたしは、そう、語りかけた。

額に手を当てると、不思議なことに、こちらの呼吸が、落ち着く。
これは、相手のための手順であると同時に、あなた自身のための手順でもある。手のひらと額の、二つの皮膚が触れているあいだ、あなたと相手は、まだ、同じ一つの体温を、分け合っている。その実感が、あなたを、その場に、つなぎとめる。

髪のことも、書いておく。
もし、相手に、まだ髪が残っているなら。
その髪を、指で、梳いてやりなさい。
病の床では、髪は、たいてい、乱れている。汗で、額に貼りついていたりする。その髪を、ゆっくりと、後ろへ、撫でつけてやる。それだけで、相手の顔は、ずいぶんと、安らかになる。人の最後の顔を、少しでも、その人らしく、整えてやること。それも、見送る者の、仕事のうちである。

第五章 子守唄

これは、必ずしも全員に必要な手順ではない。
だが、わたしには必要だった。だから、書く。

歌を、一節、歌うこと。
大きな声でなくてよい。むしろ、囁くように。相手の耳もとに口を寄せて、息で歌うように。

どんな歌でもよい。
相手が好きだった歌。あなたが子どもの頃に聞いた歌。あるいは、二人のあいだだけで通じる、誰も知らない歌。

わたしが歌ったのは、子守唄だった。

眠れ、眠れ、星が海をわたるまで──

そう始まる、古い唄である。
誰に教わったのか、もう覚えていない。気づいたときには、知っていた。たぶん、わたしの母が、わたしに歌ったのだろう。そして、わたしは、それを、わたしの子に歌った。順番でいえば、わたしがあの人を見送るより前に、わたしは、わたしの小さな子を、見送っていたのだ。

そのことを、ここで書くのは、まだ早い。
順番がある。手引きには、順番がある。

子守唄を歌うとき、声は震えてもよい。
第三章で、悲しい声で話してはいけないと書いた。けれど、子守唄だけは、別である。子守唄は、もともと、別れの歌だからだ。眠りという、いちばん小さな別れに、子どもを送り出すための歌。だから、子守唄には、もともと、悲しみが織り込まれている。あなたの声が震えても、その震えは、唄のなかに、ちゃんと収まる。

眠れ、眠れ、星が海をわたるまで。

わたしは、この一節を、二度、歌った。
一度目は、わたしの子に。
二度目は、あの人に。
同じ唄を、二度、別々の枕元で歌うことになるとは、一度目のときには、思ってもみなかった。

唄が終わったら、しばらく黙っていること。
唄の余韻は、言葉よりも長く、部屋に残る。その余韻が消えるまで、何も言わずに、ただ相手の顔を見ていなさい。余韻が消えたあと、相手の表情が、ほんの少し、ほどけていることがある。それは、唄が届いた、ということである。

歌詞を、間違えてもよい。
これは、書いておかなければならない。

子守唄というのは、不思議なもので、覚えているようでいて、いざ歌おうとすると、二番から先が、出てこなかったりする。わたしも、そうだった。星が海をわたるまで、のあとが、わからなくなった。本当は、そのあとに、もう一行、あったはずなのだ。母が歌ってくれたとき、たしかに、もう一行、あった。けれど、それが、どうしても、思い出せなかった。

だから、わたしは、同じ一行を、繰り返した。
眠れ、眠れ、星が海をわたるまで。
眠れ、眠れ、星が海をわたるまで。
出てこない先のかわりに、知っている一行を、何度も。

それで、よかったのだと思う。
見送られる人は、歌詞を、聞いているのではない。声を、聞いているのである。あなたの、その人だけのために出している、低い、震える、繰り返しの声を。だから、間違えてよい。忘れてよい。同じところを、何度、繰り返してもよい。声が、続いてさえいれば。

第六章 夜空を見上げる

見送りが、夜にかかったなら。
一度だけ、窓辺に立つこと。

これは、相手のためではない。
あなたのための手順である。

長い見送りのあいだ、あなたは、部屋の中だけを見つめ続けている。相手の顔。相手の手。相手の胸の、かすかな上下。世界が、その枕元だけに、縮んでいく。それは、自然なことである。けれど、ときに、その狭さに、あなた自身が、押し潰されそうになる。

そういうとき、窓辺に立ちなさい。
そして、夜空を見上げなさい。

空は、いつも、そこにある。
あなたの悲しみとは関わりなく、星は巡り、月は満ち欠けする。その無関心が、ときに、人を救う。世界は、あなたの一つの悲しみで、終わったりはしない。そのことが、薄情にではなく、むしろ、優しく、胸に落ちてくる夜がある。

運がよければ、彗星が見えるかもしれない。

あの夜、わたしは、窓辺に立った。
時計を見るのに疲れて、ふと立ち上がり、指三本ぶん開けた窓の隙間から、外を見た。

空に、青白い、長い尾を引くものがあった。

彗星だった。
ずっと忘れられていた星が、また巡ってきた、というような。蒼白い尾は、夜空を、音もなく、ゆっくりと横切っていた。それは急がず、慌てず、何十年も、何百年もかけて、ただひとつの軌道を、律儀に回り続けてきた者の、静かな足取りだった。

わたしは、その尾を、しばらく見ていた。
そして、思った。あの星も、いつか、誰かを見送ったのだろうか。あんなにゆっくりと、あんなに静かに巡るのは、急いだところで、もう、間に合わないものがあると、知っているからではないか。

振り返ると、あの人は、まだ、息をしていた。
わたしは、椅子に戻り、もう一度、手を取った。
「彗星が出ていたよ」と、わたしは言った。
あの人は、答えなかった。けれど、わたしは、伝えたかった。あなたが見送られるこの夜に、空には、あんなに美しいものが出ていた、と。あなたの旅立ちは、ひとりではない、と。あの青白い星も、同じ夜空を、どこかへ向かって、渡っていた、と。

夜空を見上げたら、すぐに、枕元に戻ること。
長く外を見ていてはいけない。
あなたが空を見ているあいだに、相手は、ふいに、行ってしまうことがある。それは、わたしの後悔ではない。わたしは、間に合った。けれど、間に合わない人を、わたしは知っている。だから、書いておく。空は、ほんの一瞬だけ、見上げなさい。そして、すぐに、いちばん大切な空のもとへ、戻りなさい。

第七章 待つ

ここからは、ただ、待つ手順である。
手順と呼ぶには、あまりに何もしない時間が続く。けれど、何もしないことが、いちばん難しい。

呼吸を、聞くこと。
相手の呼吸は、だんだんと、間遠になっていく。一つの息と、次の息のあいだが、長くなる。あなたは、その隙間のたびに、息を止める。これで、終わりかもしれない、と。けれど、また、息が来る。それを、何十回、何百回と、繰り返す。

その隙間のたびに、あなたの心臓は、相手の代わりに、激しく打つ。それでよい。あなたの体が、相手の終わりに、抗っているのである。

数えては、いけない。
息と息のあいだを、数えてはいけない。一つ、二つ、と数えはじめると、それは、すぐに、秒を数えることになり、秒を数えることは、終わりまでの距離を、測ることになる。あなたは、測量士ではない。ただ、傍らにいる者である。だから、数えるかわりに、聞きなさい。数字としてではなく、音として。雨だれを聞くように。波を聞くように。意味を求めず、ただ、その音が、まだ、続いていることだけを。

呼吸の音が変わることがある。
喉の奥で、水を含んだような音がしはじめる。これを聞くと、人は怖くなる。苦しんでいるのではないか、と。けれど、医者の言うには、本人は、もう、苦しくはないのだという。その音は、見送る者を苦しめるためにあるような音だが、見送られる者には、もう、届いていない。だから、怖がらなくてよい。布で、唇を湿らせなさい。それくらいしか、できることはない。それくらいは、できる。

待つあいだ、過去のことを思い出すこと。
これは、避けようとしても、避けられない。記憶は、向こうから、勝手にやってくる。

わたしのところには、たくさんの記憶がやってきた。

初めて会った日のこと。
あの人は、古本屋の前に立っていた。彗星の見える晩にだけ現れて、朝には消えてしまうという、噂の古書店。月光書房という、おかしな名前の店だった。わたしは、その噂を確かめに行って、結局、店は見つからず、代わりに、同じ噂を確かめに来た、あの人と出会った。「ありませんでしたね」と、あの人は笑った。「ええ、ありませんでした」と、わたしも笑った。店は見つからなかったけれど、わたしは、あの人を見つけた。

それから、長い年月のこと。
喧嘩をしたこと。仲直りをしたこと。引っ越しをしたこと。小さな子を、授かったこと。

つまらない記憶ほど、鮮やかに、やってくる。
これも、覚えておくとよい。

大きな出来事は、なぜか、ぼやけている。結婚式の日のことより、ある夏の夕方、二人で縁側に座って、ただ、西瓜を食べていたときのことのほうが、はっきりと、よみがえる。あの人が、種を、庭に向かって、勢いよく飛ばしていたこと。下手で、ほとんど足元に落ちていたこと。それを見て、わたしが笑ったこと。あの人が、むきになって、もう一度飛ばしたこと。

そんな、何でもない夕方が、なぜ、こんなに大切だったのか。
当時は、わからなかった。
失ってみて、わかる。
人生というのは、結局、そういう、何でもない夕方の、寄せ集めだったのだと。立派な記念日ではなく、種を飛ばすような、つまらない時間の、積み重ねだったのだと。

だから、もし、あなたに、まだ、見送るべき人がいないのなら。
そして、この手引きを、ただ、好奇心で読んでいるだけなら。
今日、その人と、西瓜でも、食べなさい。
種を、飛ばしなさい。
それが、いちばん、確かな、見送りの準備である。

その、小さな子のこと。

記憶は、いちばん見たくないものを、最後に、いちばん鮮やかに、連れてくる。
覚悟しておきなさい。
待つということは、すべてを思い出す、ということである。

第八章 もう一つの見送り

順番が来た。
だから、書く。

これは、手引きの中の、手引きである。
かつて、わたしが、いちばん最初に行った見送りの、記録である。

わたしには、子どもがいた。

長くは、いられなかった。
生まれて、ひとつ、ふたつと数えるほどの、短い季節を、過ごしただけで。

その見送りには、手引きがなかった。
誰も、教えてくれなかった。準備するものも、声のかけ方も、手の取り方も、何も知らないまま、わたしは、いちばん小さな人を、見送った。

だから、この冊子を書いている。

第一章。準備するもの。
あのとき、わたしは、何も準備していなかった。椅子も、布も、灯りも。ただ、小さな体を、腕に抱いていた。腕が、椅子だった。わたしの体温が、灯りだった。それだけが、わたしにできる、準備のすべてだった。

第三章。声をかける。
わたしは、声をかけられなかった。喉が、塞がっていた。何を言えばよいのか、本当に、何も、わからなかった。生まれてくれてありがとう、と言うべきだったのか。ごめんね、と言うべきだったのか。いまでも、わからない。だから、わたしは、ただ、名前だけを呼んだ。授けたばかりの、まだ、本人もよく知らないであろう、その名前を。

第五章。子守唄。
これだけは、できた。
眠れ、眠れ、星が海をわたるまで。
わたしは、その子に、子守唄を歌った。眠らせるための唄を。けれど、その子は、眠るのではなかった。もっと、遠くへ、行こうとしていた。それでも、わたしは、ほかの唄を知らなかった。眠りに送り出す唄しか、知らなかった。だから、それを歌った。星が海をわたるまで、と。海を、わたってしまわないように、と祈りながら、海をわたる唄を歌うしかなかった。

あのとき、空に、彗星は、出ていなかった。
わたしは、窓辺に立つことすら、思いつかなかった。だから、いま、思う。あの夜の空には、何が出ていたのだろう、と。もし、彗星が出ていたなら。もし、わたしが、ほんの一瞬でも、窓辺に立っていたなら。あの小さな旅立ちも、ひとりではなかったと、思えただろうか。

だから、第六章を、書いた。
あなたには、窓辺に立ってほしかった。わたしが、立てなかったから。

その子が逝ったあと、わたしは、片方の、小さな手袋を、長いあいだ、持っていた。

冬に、編んだものだった。
まだ寒い季節があるうちは使えるだろうと、わたしは、小さな毛糸の手袋を、二つ、編んだ。けれど、その子は、片方をはめただけで、もう片方を、はめる前に、逝ってしまった。

だから、片方だけが、残った。
対になるはずの、もう片方。それは、はめられることのないまま、抽斗の奥に、ずっと、あった。捨てられなかった。捨ててしまえば、その子が、本当に、片方になってしまう気がして。

わたしは、その片方の手袋を、ときどき、取り出しては、手のひらに載せた。あまりに小さくて、わたしの指は、一本も入らなかった。

あの人は、そのことを、知っていた。
わたしが、片方の手袋を、捨てられずにいることを。
何も言わずに、知っていた。

そして、あの人の見送りの、最後の夜。
わたしは、気づいた。
枕の下に、あの、片方の手袋が、入れてあった。

いつから、そこにあったのか、わからない。
あの人が、自分で、入れたのだろう。動けるうちに。わたしに、気づかれないように。

二つの見送りを、ひとつにつなぐように。
わたしが、二度、同じ子守唄を歌うことになる、ずっと前から。
あの人は、それを、枕の下に、忍ばせていた。

第九章 その時が来たら

息と息のあいだが、これ以上ないほど、長くなったとき。
そして、次の息が、もう、来なかったとき。

それが、その時である。

慌てなくてよい。
何も、しなくてよい。
最後の息が、来なかったあとも、しばらく、そのままでいなさい。

息が止まった、と思っても、すぐには、決めつけないこと。
最後の息のあとに、もう一つ、長い時間をおいて、思いがけず、もう一度だけ、息が来ることがある。それは、苦しみではない。名残である。海が、いちばん遠くまで引いたあと、もう一度だけ、足元まで、寄せてくる、あの一波のようなもの。だから、その最後の一波を、見逃さないように。あなたが、もう終わったと思って、立ち上がってしまったあとに、その一波が来たら、あなたは、それを、見送れなかったことに、なる。だから、座っていなさい。終わったと思っても、もう少しだけ、座っていなさい。

すぐに、誰かを呼びに行ってはいけない。
すぐに、灯りを点けてはいけない。
その、いちばん静かな時間は、あなたと、見送った人の、二人だけのものである。それを、誰にも、邪魔させてはいけない。世界が、二人を引き離す前の、最後の、いちばん長い、一瞬。それを、あなたは、ゆっくりと、味わいなさい。味わう、という言葉は、ふさわしくないかもしれない。けれど、ほかに、言葉が見つからない。

手を、まだ、握っていなさい。
体温は、すぐには、消えない。
あなたの手のひらに包まれた手は、まだ、温かい。その温かさが、ゆっくりと、引いていくのを、あなたは、感じることになる。それは、悲しいことではあるが、同時に、不思議と、穏やかなことでもある。潮が引くように、その人は、少しずつ、遠くなっていく。あなたは、その背を、見送る。

わたしは、あの人の手を、夜が明けるまで、握っていた。
止めなかった時計が、いつのまにか、止まっていた。誰も、巻かなかったから。針は、明け方の、ある時刻で、止まっていた。それが、あの人の、行った時刻だったのかどうかは、わからない。けれど、わたしは、そう思うことにしている。時計は、最後に、その仕事をした。あの人の時刻を、刻んで、止まった。

窓の外が、白みはじめたら。
窓を、開けなさい。
指三本ぶんではなく、今度は、いっぱいに。

夜のあいだ、部屋にこもっていた空気を、外へ、送り出すように。
そして、新しい朝の空気を、入れるように。

あの夜、わたしが窓を開けると、雨の匂いがした。
降りそうで降らなかった雨が、夜のあいだに、どこか遠くで、降ったらしかった。湿った土の匂いが、部屋に流れ込んできた。あの人の好きだった匂いが、あの人の、いなくなった部屋に。

少しだけ、遅かった。
けれど、間に合わなかったわけでは、ないと思う。
匂いは、いつも、少し遅れて、届くものだから。

第十章 後片付けについて

ここからは、事務的な手順が続く。
人は死ぬと、たくさんの手続きが、待っている。それは、悲しみとは、別のところで、淡々と進んでいく。あなたは、悲しむ間もなく、たくさんの書類を書き、たくさんの人に頭を下げ、たくさんの決定を、下さなければならない。

それは、ある意味で、救いでもある。
手続きに追われているあいだは、悲しみが、少しだけ、遠ざかる。だから、後片付けを、面倒だと思わなくてよい。それは、悲しみが、あなたを、一息つかせるために、用意した、間奏のようなものである。

部屋を、片付けるとき。
急いではいけない。

その人の使っていたものを、すぐに、捨ててはいけない。
湯呑み。眼鏡。読みかけの本。枕元の、薬。
それらは、しばらく、そのままにしておきなさい。まだ、その人が、ちょっと出かけているだけのように。あなたの心が、ゆっくりと、その人のいない暮らしに、慣れていくまで。

慣れる、という言葉も、ふさわしくないかもしれない。
人は、大切な人の不在に、本当に慣れることは、たぶん、ない。ただ、不在と一緒に、暮らせるようには、なる。不在を、追い出すのではなく、不在に、椅子を一つ、用意してやる。あの、脚の短い、かたりと鳴る椅子を。

形見について。
何を残し、何を手放すかは、あなたが決めてよい。
ただ、一つだけ、助言を書いておく。

その人が、いちばん、よく触れていたものを、残しなさい。
立派なものでなくてよい。高価なものでなくてよい。毎日、その人の手が、無意識に触れていたもの。湯呑みの、欠けた縁。鞄の、すり切れた持ち手。眼鏡の、曲がった蔓。そういうものに、その人は、いちばん長く、宿っている。

わたしが残したのは、藍色のマッチ箱だった。
三日月の刻印された、あの箱。
あの人が、毎晩、蠟燭に火を点けるのに使っていた箱。
わたしは、それを、抽斗にしまった。中のマッチは、減らさない。減らしてしまえば、あの人の指が、最後に触れた配置が、崩れてしまうから。

片方の手袋は、どうしたか。

それは、あの人と一緒に、送った。
枕の下にあった、あの、片方の手袋。
わたしは、それを、あの人の手に、握らせた。
そうすれば、向こうで、対になる、もう片方を、渡してくれる人がいるかもしれない、と思って。
小さな手の持ち主に。
あの人が、きっと、先に行って、見つけていてくれると思って。

片方だけだったものが、向こうで、対になりますように。
それが、わたしの、たった一つの、願いだった。

第十章の二 一人になった夜に

すべての手続きが終わり、人々が帰り、家が、しんと静まったとき。
あなたは、初めて、本当に、一人になる。

その夜のことを、書いておかなければならない。
誰も、教えてくれないから。

家じゅうの灯りを、点けてもよい。
一人になった夜、わたしは、家じゅうの灯りを、点けた。台所も、廊下も、使っていない部屋まで。明るくすれば、不在が、薄まる気がした。けれど、薄まらなかった。明るい家の中で、不在だけが、いっそう、くっきりと、形を持って、そこにいた。

だから、灯りは、消してもよい。
わたしは、結局、すべての灯りを消して、あの、藍色のマッチ箱で、蠟燭を、一本だけ、灯した。三日月の刻印された箱。あの人が、毎晩、火を点けていた箱。蓋を引くと、燐の匂いがして、小さな炎が立った。その、たった一つの、揺れる灯りのほうが、家じゅうの電灯よりも、ずっと、あの人が、いる気がした。

食事のことを、書いておく。
一人になった夜、あなたは、食欲がないだろう。それでも、何か、口に入れなさい。立派なものでなくてよい。冷たいご飯に、湯をかけただけのものでよい。

ただ、二人分、作ってしまっても、慌てなくてよい。
わたしは、しばらくのあいだ、味噌汁を、二人分、作り続けた。手が、覚えているのである。二つの椀を出し、二人分の出汁をとる。気づいて、はっとして、けれど、もう、作ってしまったものは、仕方がない。だから、わたしは、二つの椀を、両方とも、自分の前に並べた。一つは、わたしのために。もう一つは、あの人のために。そして、あの人の椀のぶんも、わたしが、いただいた。

それは、悲しい食卓だっただろうか。
そうではなかった、と、いまは思う。
二人分を、一人で食べるということは、もう一人を、自分の中に、入れるということだった。だから、わたしは、いまでも、ときどき、二人分を作る。そして、二人分を、いただく。あの人は、わたしの中で、まだ、食べている。

眠れない夜は、子守唄を、自分に歌いなさい。
これは、最後の手段である。

見送る者には、子守唄を歌ってくれる人が、いない。
だから、自分で、自分に歌うしかない。
眠れ、眠れ、星が海をわたるまで。
おかしなものである。誰かを眠らせるための唄を、自分が、眠るために、歌う。けれど、それで、よかった。声に出して歌っているうちに、その声が、いつのまにか、あの人の声に、聞こえてくる。母の声にも、聞こえてくる。わたしが、かつて、その唄を歌ってやった、小さな子の、まだ言葉にならない声にも。

何代もの、たくさんの声が、一つの唄の中で、重なる。
そして、わたしは、その声に、見送られるように、眠る。

第十一章 声をかけ続ける

見送りは、その時で、終わらない。
これは、いちばん、誤解されている点である。

人を見送るというのは、息が止まった、その瞬間のことだと、人は思っている。けれど、違う。見送りは、そのあと、何年も、何十年も、続く。

だから、声をかけ続けること。
第三章で書いた、声をかける手順は、その時で終わりではない。

仏壇の前で。墓の前で。あるいは、ただ、ひとりで台所に立っているときに。あなたは、これからも、その人に、声をかけ続けることになる。

今日、何があったか。
庭の花が咲いたこと。
猫が縁側で眠っていたこと。
味噌汁に、今日は、ちゃんと豆腐を入れたこと。

返事は、ない。
けれど、あなたは、知っている。耳は、最後まで残る、と。あれは、息のあるあいだだけの話ではない、と、いまのわたしは、思っている。

わたしは、毎晩、声をかける。
彗星の話を、いちばん多くする。
あの夜、空に出ていた、青白い、長い尾を引く星。あれは、何十年かに、一度しか、巡ってこないのだという。だから、わたしが生きているあいだに、もう一度、見られるかどうか、わからない。

けれど、と、わたしは、あの人に話す。
もし、もう一度、あの星が巡ってきたら。
そのときは、わたしも、そろそろ、行く頃かもしれない。
そうしたら、今度は、わたしが、見送られる番だ。
あなたが、わたしの枕元に、椅子を運んできて、脚の短い、かたりと鳴る、あの椅子に座って、わたしの手を、握ってくれるだろうか。
そして、あの子守唄を、歌ってくれるだろうか。
眠れ、眠れ、星が海をわたるまで、と。

参考までに、記しておく。
わたしが、この見送りについて、いちばん多くを学んだのは、どの本からでもなかった。
ただ、しいて一冊、挙げるとすれば。

月光書房、という古書店がある。
彗星の見える夜にだけ現れて、朝には消えているという。わたしは、生涯に一度も、その店に入ることはできなかった。けれど、あの最後の夜、彗星を見たあと、わたしは、ふと、思ったのだ。
あの店には、きっと、こういう手引きが、置いてあるに違いない、と。
見送るための手引き。見送られるための手引き。世界中の、ありとあらゆる別れの、手引きが。
朝には消えてしまう店だから、誰も、それを買って帰ることはできない。
だから、わたしは、自分で、書くことにした。
あの店の棚に、いつか、そっと、並べてもらえるように。

最終章 あなたへ

ここまで、読んでくれて、ありがとう。

この手引きが、あなたの役に立つことを、わたしは、望んでいない。
役に立つ、ということは、あなたにも、見送るべき人が、いる、ということだから。
そんな日が、来ないように、と、わたしは、本当は、願っている。

けれど、その日は、来る。
誰にでも、来る。
だから、わたしは、書いた。

最後に、いちばん大切なことを、書く。
これだけは、覚えておきなさい。

見送りは、悲しい。
けれど、見送ることが、できるのは、しあわせなことである。

見送れなかった人を、わたしは、知っている。
別れの言葉も、最後の手も、子守唄も、何ひとつ、渡せないまま、引き離された人を。
それに比べれば、椅子を運び、布を用意し、灯りを点し、手を握り、子守唄を歌い、彗星を見て、最後の息のあとまで、その手を握っていられたことは。
それは、悲しみであると同時に、贈り物だった。

だから、あなたも。
もし、見送ることができるなら。
どうか、最後まで、見送りなさい。
泣いてもよい。取り乱してもよい。手順を、間違えてもよい。
ただ、そこに、いなさい。
いちばん大切な人の、いちばん長い夜の、いちばん近くに。

わたしの名前は、ここには、書かない。
名前を書いてしまえば、これは、わたし一人の物語になってしまう。
そうではなく、これは、あなたの物語に、なってほしい。

ただ、一つだけ。
わたしが、二人を見送った者であることを、ここに、記しておく。
小さな、片方だけの手袋を残していった者と。
その手袋を、枕の下に忍ばせていた者と。
わたしは、その二人を、見送った。
そして、いつか、わたしも、見送られる。
そのときには、空に、また、あの青白い星が、巡っていてほしい。

眠れ、眠れ、星が海をわたるまで。

この一節を、最後に、あなたに、贈る。
いつか、あなたが、誰かの枕元で、これを歌う日が来たら。
そのときは、わたしも、どこか遠くの夜空から、一緒に、口ずさんでいる。

──手引きは、ここで、終わる。
けれど、見送りは、終わらない。
だから、この最後の一行は、空けておく。
あなたが、いつか、ここに、あなた自身の、見送った人の名前を、書き込めるように。

この物語にひそむ符牒

ほかの物語と、ひそかに分かち合っているもの:

  • ミラ彗星
  • 月光堂のマッチ
  • 子守唄
  • 月光書房
  • 片方の手袋

十二をつなぐ符牒について →

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