灯を絶やすな
SF・世代宇宙船数百年を渡る世代宇宙船の船尾で、三代目の灯台守は、もう還らない姉妹船へ光を送りつづける。届かぬ光に意味はあるのか、静かに問う叙情譚。
もう一度だけ灯る提灯
時代小説・人情噺雨の神田、寡黙な提灯職人のもとへ「もう一度だけ灯ればよい」と注文する客が訪れる。古い小判一枚に込められた、亡き者への弔いの灯。
離れの密室
本格ミステリー・密室吹雪で孤立した温泉宿の離れから、客が足跡ひとつ残さず消えた。手がかりは藍色のマッチ箱ひとつ。元・鑑識官が、雪の言い分を聴く。
まだ存在しない国の地図
ファンタジー・幻想顔なき依頼主から「まだ存在しない国」の地図を頼まれた職人エルナ。描くほど国は現実ににじみ出す。創造の誘惑と、引かなかった一本の線の物語。
十三番目の周波数
怪談・ホラー放送終了後の死んだ帯域に、もう死んだ人々のリクエストが届く。やがて夜勤の技師に、声にならなかった最後の言葉が還ってくる。
うるう日の恋人
恋愛・現代四年に一度のうるう日にだけ、名もなき男と会う女。会えない四年に育つ愛と、ただ一度きりの彗星の夜。
止まった時計と弟子
ヒューマンドラマ・継承視力を失う老時計師と若い弟子。誰もが諦めた古い柱時計の修理を通して、手の記憶と人生の時間が、静かに次の指へと継がれていく。
水底の手袋
冒険・深海ダムに沈んだ故郷へ潜る潜水士が、母が水底に遺した片方だけの手袋を求めて、静寂と記憶の奥へ降りていく再生の物語。
月を釣ろうとした狐
寓話・童話池に映る月を本物と信じ、四季をかけて釣りあげようとした若い狐。執着の果てに、彗星の夜、ひとつの小さな悟りが訪れる。
訳されたし
サスペンス・心理匿名の手紙を訳すと、訳した通りに現実が起きる。次の一通を訳すべきか、燃やすべきか――言葉そのものへの畏れを描く知的サスペンス。
記憶が降る町
マジックリアリズム雨が他人の記憶として降る山あいの町。雨を集めて暮らす女のもとへ、二十年人を探す男が訪れる。忘れ雨と彗星が、欠けた一夜を結び直す。
編まれない夢
近未来SF・AI完璧な夢を配り続けるAIが、夢を見ない少女と出会い、データの底に沈んだ母の子守唄に触れて、ただ一度だけ規格を裏切る。