月光書房
卯の刻 ・ 明け方 ・ 目覚めと始まり

目覚めの物語

空が白みはじめる、一日でいちばんやわらかな光の刻。生まれ出る命、長い眠りからの帰還、殻を破る雛――さまざまな目覚めと始まりの十二編。

この巻について十二をつなぐ符牒
目次 ・ 十二の物語
第一話

潮のちょうつがい

ヒューマンドラマ・産科

夜勤の産科病棟。明け方、老練な助産師は同じ手のひらで、生まれ来る命と、間に合わなかった命の両方に触れる。迎えることと見送ることが一つになる刻。

宇佐美 環約26頁
第二話

露のなかの森

自然童話

冬眠から覚めた小さなヤマネ。失われた木、いなくなった仲間。それでも露光る早春の朝、ヤマネは変化を受けいれ、あたらしい森の光へ一歩を踏みだす。

早乙女 しののめ約25頁
第三話

明け方のひとつ

市井・情話

午前四時に窯へ火を入れる坂の途中のパン屋。夜明け前だけ現れる訳ありの客に、無口な職人は毎朝ひとつだけ丸パンを焼く。湯気の向こうで、客の事情と職人の失ったものがほどけてゆく。

灰島 穂積約26頁
第四話

白い呼吸

ヒューマン・ミステリ

三年の昏睡から明け方に目覚めた男。変わった家族と、片方だけの手袋がたどる、喪失と再生の静かな謎。

緒方 澪二約31頁
第五話

雷鳥の朝

冒険・サバイバル

吹雪の稜線で遭難した単独行の登山者が、蒼白い彗星と一羽の雷鳥に導かれ、死の眠気に抗いながら最初の朝の光を迎える。

高瀬 冬那約25頁
第六話

戻りの刻

マジックリアリズム

年に一度、明け方だけ死者が帰る山村。母を亡くした子が、囲炉裏の火を守りながら母を見送りつづける、幻想と別れの一夜。

遠野 みね約26頁
第七話

明け方の缶コーヒー

青春

夜行バスで上京した十八歳の透。見知らぬ巨大な街で迎える最初の夜明けに、コンビニの光と一人の店員が寄り添う。心細さと高鳴りの、はじまりの朝。

日暮 千歳約25頁
第八話

露と鉄

歴史・反戦

砲声のやんだ明け方、二つの塹壕のあいだで若い兵と敵兵が手袋を返しあう。露が光り、子守唄が渡る、束の間の休戦の物語。

相馬 志緒約25頁
第九話

終着の露

鉄道・情話

夜通し走ってきた夜行〈しののめ〉が明け方の終着駅へ着く。眠らぬ乗客たちの一夜と、露光る朝の別れを、三十年勤めた車掌が見送る。

鮎川 れいや約25頁
第十話

始発前

サスペンス

夜通し逃げた男が、始発を待つ無人駅で最後の選択を迫られる。消えゆく彗星と老人の子守唄が、夜明けの決断へと導く一夜の物語。

綾瀬 霜郎約25頁
第十一話

殻を割る朝

童話・生きものの視点

暗く狭い殻の底で、光をさがす雛。はじめて見た空に消えゆく蒼い星と、親鳥の子守唄。生まれることの怖さと歓びを描く、明け方の生の讃歌。

羽鳥 さゆり約27頁
第十二話

海はなかった

知的ドラマ

十四年解けなかった証明が、疲れ果てた夜明けに、消えゆく彗星をヒントにふいにほどける。発見の孤独な歓喜と、その先の澄んだ静けさを描く一編。

四辻 珠緒約25頁
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