渡り初め
幻想仕事を手放した黄昏、橋の半ばですれ違ったのは、選ばなかった人生を生きるもう一人の自分だった。逢魔が時が問う「もし」の物語。
黄昏の路地、水無月の火
幻想ミステリ三年前に消えた姉を探しつづける妹が、逢魔が時の入り組んだ路地で、生とも死ともつかぬ姉と出会う。短い言葉のうちに失踪の真相と言えなかった思いがほどけてゆく。
かはたれの汁
妖・時代橋のたもとの飯屋に、たそがれどきだけ通う女。人に化けたあやかしと店の女将が心を通わせる、逢魔が時の切ない情。
継ぎの唄
幻想閉館まぎわの画廊。逢魔が時、古い肖像画の女と目が合う。途切れた子守唄の続きを知る者だけが、彼女を眠りへ導ける。
潮の忘れもの
ファンタジー・変容紫に暮れる浜辺で出会った、羽衣とも鱗ともつかぬ者。待つ気持ちの化身と交わす、みじかい逢瀬と別れ。
六人目を数える
民俗・幻想逢魔が時、公園の子を数えると一人多い。増えたその子に名を贈るまでの、境の刻の哀しみと祈りの物語。
各駅停車の逢魔が時
時間幻想暮れゆく各駅停車の車内、向かいに座った老人はやがて年老いた自分自身だと分かる。逢魔が時にだけ交わる、現在と未来の、たった一つの対話。
五時十七分の顔
現代・幻想昼の仮面が剝がれる逢魔が時、隠してきた顔で見知らぬ古書店に招かれた主人公が、二つの顔の両方を受けとめられ、ありのままの自分と出会う物語。
むこうの町
ファンタジー・異界逢魔が時、古い橋を渡ると、そこはよく似た別の町だった。橙のあかりの家に、亡き母がいて、片方だけの手袋を繕っていた。境を越える誘惑と、帰ることの意味を描く郷愁の一編。
現像
怪異・叙情母の四十九日、黄昏の海で切った一枚に、逝ったはずの母が写り込む。片方だけの手袋が結ぶ、生者と死者の一瞬。
逢う刻
幻想・情話母が遺した川べりの部屋。逢魔が時にだけ鳴る黒電話の向こうは、もう会えないはずの声。青いマッチの火が灯すあいだ、伝えそびれた「ありがとう」を交わす、藍に暮れる数分の奇跡。
たそがれの門番
寓話昼と夜のさかいに立つ門を守る老門番。ある黄昏、渡りたがらぬ幼い者が現れ、掟と情のあいだで、彼は初めて迷う。境を守ることの意味をめぐる、たそがれ色の寓話。