月光書房
丑の刻 ・ 丑三つ時 ・ 怪異・境界

丑三つ時の物語

この世とあの世の境がいちばん薄れる、草木も眠る刻。怖さの底に情と救いを宿す、怪異と境界の十二編。

この巻について十二をつなぐ符牒
目次 ・ 十二の物語
第一話

木の鳴く家

怪談

越してきた古家で毎夜みしりと廊下を渡る足音。辿り着いたのは、片方だけの手袋を握り、来ぬ夫を五十年待ちつづけた女の哀しい思いだった。

常世 幽約25頁
第二話

合わせ鏡の回廊

幻想怪異

丑三つ時、向かい合う二枚の鏡の奥に亡き妻を見つけた男。境を越えて会いにいく誘惑と、戻ることの意味を描く、哀切な怪異譚。

鏡沼 志摩約27頁
第三話

送りの坂

現代怪談

丑三つ時の雨の峠で女を乗せる。行き先は、水底に沈んだ村の名。三十年帰れなかった姉と、待ちつづけた弟を、蒼い星が送る夜の物語。

峠 由良約25頁
第四話

消灯

怪異・情

消灯後の病棟、丑三つ時。ある病室のベッドのかたわらに、毎晩同じ刻、いるはずのない見舞い客が立つ。やがて分かる、その客が誰で、誰に会いに来ているのか。

白河 望約26頁
第五話

三十年の針

怪異・叙情

三十年止まった柱時計が、丑三つ時にだけ動きだす。針の指す刻に、亡き夫と名もなき子が、しずかに待っていた。時と死をめぐる哀傷譚。

針谷 時約25頁
第六話

送り提灯

民俗怪談

四十九日に帰郷した男が、丑三つ時の畦道で声なき蒼い葬列に行き合う。列のなかに、片方だけの手袋をはめた育ての伯母を見つけて。

野辺 静馬約25頁
第七話

枕上の人

怪異・情

丑三つ時、眠る子の枕上に立つ者がある。母は我が子を抱き、声がかれるまで子守唄を歌う。片方だけの手袋が七十年の哀しみをそろえる、境の刻の物語。

守屋 綾約26頁
第八話

渡り場

現代怪談

終電の絶えた踏切が丑三つ時に鳴りだす。渡れずにいる者たちの群れのなか、十一年前に亡くした子が、片方だけの手袋を探していた。

鐘ヶ江 静香約25頁
第九話

井戸番

怪異

丑三つ時、涸れぬ井戸の底から名を呼ぶ声。水面に映るのは失くした人の顔。呼ばれて手を伸ばしたくなる井戸番の女が、境の向こうへ渡す送り唄。

井原 みなも約25頁
第十話

杜の釘音

時代・怪異

丑三つ時の杜に通う白装束の女。御神木に打つ五寸釘は呪いか、それとも二十年送れずにいた夫への、断ち切れぬ恋の慟哭か。

藁科 志乃実約25頁
第十一話

内線七番

現代怪異

無人の旧病院で夜警をする男。線の切れた内線が丑三つ時に鳴り、受話器の向こうから、届かなかったひとことが静かに語られる。

音羽 奏約25頁
第十二話

岸辺の砂時計

幻想・境界

丑三つ時、夢の岸辺で毎夜会うなつかしい人。だがその人は、もうこの世にいない。生と死の境を、子守唄がしずかに繋ぐ幻想譚。

常盤 夜舟約25頁
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