数える
家族・医療危篤の母の枕辺で、娘は呼吸を数え、子守唄をうたう。夜明け前、空に冴える蒼い星が海をわたるまで。
崩れた斜面
労働・救助雪崩に埋もれた集落。凍てつく夜明け前、村人はスコップ一つで掘りつづける。救いと喪失の狭間、空にミラ彗星が冴える。
篝火の浜
海・情時化のおさまらぬ夜明け前の浜。帰らぬ船を、妻は篝火を焚いて待ちつづける。闇の底に冴える蒼い星が照らすものとは。
番号を返す
更生・ヒューマン十七年の刑期を終える最後の夜。差し入れの箱に、片方だけの手袋と、青いマッチ。夜明け前の房で、悔いと祈りのなかに蒼い星が兆す。
冷えの底
現代・心理四日眠れぬ夜の底。魔の時間に開けたカーテンの向こう、蒼く冴える彗星と、亡き母の子守唄が、私を朝まで繋ぎとめる。
三時四十分の坂
青春・労働みなが眠る夜明け前、少年は牛乳を配る。かじかむ片手、重い荷。だが坂の上で見た蒼い彗星が、いちばん暗い刻にこそ、いちばん強く光っていた。
灯明の夜
宗教・叙情高熱の娘のため、寺の本堂で夜通し祈る母。言葉にならぬ願いを闇に捧げ、夜明け前の空に冴える蒼い星に、かすかな希望を見出す一夜の物語。
空木沢
冒険・救助吹雪のやんだ夜明け前、凍てつく西面を捜索隊が登る。消えかける望みの先、稜線に一つの蒼い星が灯る。命を捜すことの峻厳と希望。
九十分の夜
SF軌道上では九十分ごとに夜明けが来る。青白い夜明けの線を見つめる飛行士が、地に残した娘と、脆く尊い故郷を思う。
澪の道
現代・情母を喪い、夜明け前の橋に立つ女。犬を連れた老人の一言と一杯の生姜湯が、いちばん暗い刻に、ひとつの命をそっと繋ぎとめる。
夜を編む者
寓話夜のいちばん深い底に棲む者が、眠れぬ人間に問う。このまま夜が明けなければいい、と思ったことはないか、と。闇の誘いと、夜明けを求める心の寓話。
夜明け前の待合室
現代・群像始発を待つ夜明け前の待合室。眠る老人、泣きはらした若者、旅立つ者、帰る者。言葉なく、けれど同じ闇と夜明けを待つ、名も知らぬ人々のひそやかな連帯。