月光書房
未の刻 ・ 昼下がり ・ まどろみ・回想

まどろみの物語

陽が傾き、気だるい眠気が世界を包む刻。午睡、白昼夢、ふとよみがえる遠い記憶――時間がやわらかく溶ける十二編。

この巻について十二をつなぐ符牒
目次 ・ 十二の物語
第一話

遠回りの午後

現代・ほろ苦

午後の各駅停車で居眠りし、降りるはずの駅を過ぎた会社員。まどろみの夢に蒼い星が浮かび、亡き祖母との忘れていた約束がよみがえる。

谷原 まどか約25頁
第二話

五時間目のまどろみ

青春・ノスタルジー

昼下がりの教室、五時間目。窓ぎわの席でまどろむ生徒の夢に蒼い星がよぎり、ななめ前の横顔と、失われゆく季節の淡い痛みが溶け合う。

睦月 透子約25頁
第三話

星の渡る畳

家族・記憶

認知症の祖母は孫を亡き夫と呼び、六十年前の夏を生きる。まどろむ祖母に寄り添う孫は、彗星の夜と片方の手袋に宿る家族の物語に触れる。

深沢 眠子約25頁
第四話

蝉時雨のあとで

SF寓話・時間

木陰でうたた寝した百姓が目覚めると百年が過ぎていた。浦島の変奏。変わらぬ蒼い彗星だけを道しるべに、失った歳月の意味を静かに受けとめる幻想譚。

亀山 睡蓮約26頁
第五話

午後の塵

情話・回想

ひとり暮らしの老人が、押入れから見つけた古いアルバムを繰るうち、若き日の恋、戦争、逝った友、亡き妻が、まどろみのなかで一枚ずつ動き出す午後。

藤白 澪約26頁
第六話

瓶の底のビー玉

少年の夏・ノスタルジー

終わらないと思えた田舎の夏。秘密基地に埋めた青いビー玉を、五十近い男が三十年後に掘り返す。戻らぬ午後が、いつまでも青く光る。

麦倉 夏彦約25頁
第七話

二度、跳ね返る光

恋愛・回想

冷めていく珈琲、傾く午後の斜光。来なかった人を待つ喫茶店の窓際で、恋の始まりと終わりが、まどろみのように立ちのぼる。

都築 珈奈約25頁
第八話

まどろみの桟橋

語り・情話

昼下がりの病室で、老いた祖母が孫娘に、まだ誰にも話していなかった若き日の恋と、選ばなかった道を語りはじめる。まどろみの果てに残る、片方だけの手袋の物語。

綾野 汐音約25頁
第九話

縁側の日

マジックリアリズム

昼下がりの午睡のなかへ、七年前に逝った妻がふらりと訪ねてくる。夢とも現ともつかぬ縁側で交わす、目覚めれば消える、けれど確かにあった再会。

夢野 睡子約25頁
第十話

昼の柵

動物・情話

客もまばらな昼下がりの古い動物園。老いた飼育員は、四十二年連れ添った一頭の老象の傍らでまどろむ。ことばを持たぬ相手との歳月と、静かに近づく別れ。

楠田 徹約25頁
第十一話

燃え殻の匂い

叙情

祭りの翌日の昼下がり、少女は夜空を横切った蒼い星と、境内で出会った少年の片方だけの手袋を、まどろみのなかで反芻しつづける。

芹沢 なつ約26頁
第十二話

水時計の番人

寓話

まどろむと世界の時間が止まる水時計の番人。止まった昼下がりに現れた片手袋の少女と、月光書房から借りた時の書が、進む時間と留まる時間の答えを教える。

時任 睡水約28頁
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