遠回りの午後
現代・ほろ苦午後の各駅停車で居眠りし、降りるはずの駅を過ぎた会社員。まどろみの夢に蒼い星が浮かび、亡き祖母との忘れていた約束がよみがえる。
五時間目のまどろみ
青春・ノスタルジー昼下がりの教室、五時間目。窓ぎわの席でまどろむ生徒の夢に蒼い星がよぎり、ななめ前の横顔と、失われゆく季節の淡い痛みが溶け合う。
星の渡る畳
家族・記憶認知症の祖母は孫を亡き夫と呼び、六十年前の夏を生きる。まどろむ祖母に寄り添う孫は、彗星の夜と片方の手袋に宿る家族の物語に触れる。
蝉時雨のあとで
SF寓話・時間木陰でうたた寝した百姓が目覚めると百年が過ぎていた。浦島の変奏。変わらぬ蒼い彗星だけを道しるべに、失った歳月の意味を静かに受けとめる幻想譚。
午後の塵
情話・回想ひとり暮らしの老人が、押入れから見つけた古いアルバムを繰るうち、若き日の恋、戦争、逝った友、亡き妻が、まどろみのなかで一枚ずつ動き出す午後。
瓶の底のビー玉
少年の夏・ノスタルジー終わらないと思えた田舎の夏。秘密基地に埋めた青いビー玉を、五十近い男が三十年後に掘り返す。戻らぬ午後が、いつまでも青く光る。
二度、跳ね返る光
恋愛・回想冷めていく珈琲、傾く午後の斜光。来なかった人を待つ喫茶店の窓際で、恋の始まりと終わりが、まどろみのように立ちのぼる。
まどろみの桟橋
語り・情話昼下がりの病室で、老いた祖母が孫娘に、まだ誰にも話していなかった若き日の恋と、選ばなかった道を語りはじめる。まどろみの果てに残る、片方だけの手袋の物語。
縁側の日
マジックリアリズム昼下がりの午睡のなかへ、七年前に逝った妻がふらりと訪ねてくる。夢とも現ともつかぬ縁側で交わす、目覚めれば消える、けれど確かにあった再会。
昼の柵
動物・情話客もまばらな昼下がりの古い動物園。老いた飼育員は、四十二年連れ添った一頭の老象の傍らでまどろむ。ことばを持たぬ相手との歳月と、静かに近づく別れ。
燃え殻の匂い
叙情祭りの翌日の昼下がり、少女は夜空を横切った蒼い星と、境内で出会った少年の片方だけの手袋を、まどろみのなかで反芻しつづける。
水時計の番人
寓話まどろむと世界の時間が止まる水時計の番人。止まった昼下がりに現れた片手袋の少女と、月光書房から借りた時の書が、進む時間と留まる時間の答えを教える。